S-24 秩父/熊倉山から酉谷山と矢岳

2012年5月13~14日(月)

酉谷避難小屋より 夜明け直後、酉谷避難小屋からの眺め。うっすら富士山が見える。

1日目
 武州日野駅から熊倉山日野コース登山口に向かって歩き出す。白久駅からの林道コースは、登山道崩落で通行止めとの由であった。
 しばらく車道をたどる。矢通反隧道というかわいらしいトンネルをくぐり、登山口までは小一時間の道のり。立派な指導標の立つ登山口から山道に入ると、ほどなく沢沿いの道になる。日差しは強いが、風が涼しい。沢音も耳に涼しい。この道なら夏でも登れそうだ。沢身を右に左にと渡りながら徐々に高度を上げていく。一ヶ所、橋がなく、沢の中に靴を浸しながら渡るところがあったが、ここは増水時には渡れないだろう。
 沢を離れ急登にたっぷり汗を絞られると、官舎跡を通り、水場に着く。斜面を横切る登山道の少し下に清冽な水が湧いている。まわりを見渡すと、他にも水が出ているところがある。ここで昼食にした。
 再び歩き出すとすぐ、素晴らしい広場、笹平にでる。新緑の木々が美しい。やがてようやく熊倉山へと登り着く。頂上には多くの登山者がいたが、我々が休んでいるうちに、誰もいなくなってしまった。さぁ、ここからが今回の山行のメインだ。
 熊倉山を後にするが、ルートは今までとあまり変わらない良い道だ。迷い込み防止の大きな標識が、かえって踏み跡の確かさを証明しているようにも思える。あまり広すぎず、狭すぎない快適な尾根道を辿る。ところどころにアカヤシオが咲いている。また遠くの山も見えているのだが、潅木が邪魔して見づらくて、何となく欲求不満である。
 小さなコブを越えながら酉谷山へと迫っていく。やがて、尾根の幅が広がり、枯れた笹原の道になる。一面のすべての笹が枯れている。ウェブ上の記録では背丈を没する笹薮の道と書かれているが、枯れたようだ。歩きやすい。また再び笹薮になる日がくるのだろうか。
 大血川への分岐点を過ぎて、小黒への登りにかかると、踏み跡が不明瞭になる。赤布はあるのだが、見つけにくい。稜線の西側を巻きながら登っていく人が多いようだ。だいぶ疲れてきているので、巻きたい気持ちは良くわかる。どうせなら全部巻いて、酉谷山との鞍部に上がればいいのにと、つい弱音が出る。それでも何とか赤布を拾いながら、ようやく小黒の頂上に着く。
 小黒の頂上からは一旦高度を下げ、本日最後の登りにかかる。日は西にずいぶんと傾いた。晩秋ならもう暗くなる時刻だ。なかなか小黒が低くならない。少し傾斜が緩くなるころようやく小黒を眼下にし、登りやすいところを拾いながら歩いていくと、頂上の標識が見えた。17時近くになって、酉谷山頂にようやく辿り着いた。初めて、奥多摩側の展望が開けた。なかなか山深い頂上だ。
 頂上でしばらく休憩した後、今宵の宿泊地、酉谷避難小屋に降りる。混雑はどうかと気になっていたが、先客は若い男性が一人、加えて我々5人でちょうど公称定員一杯だ。皆で持ち寄ったつまみと、この時の為に延々運んできた酒で乾杯した。実家は浦和という同宿の男性も加わって、快適な避難小屋の夜は更けた。
2日目
 今日もいい天気だ。避難小屋の窓から奥多摩はもとより、富士山や丹沢の山々も見渡せる。ひとしきり夜明けの山々の景観を楽しんだ後、朝食の準備をする。水場は小屋のすぐ前にあるが、水量はあまり多くない。枯れるときもあるというが、そうかもしれないと思わされるほどの流れだ。
 朝食を済ませ、支度を整えて、簡単に小屋掃除(同宿の男性はまだしっかり寝ていたので)を済ませ、矢岳に向けて出発する。都県境の登山道は、よく整備され歩きやすい。あまりにも歩きやすかったので、うっかり矢岳へ向かう尾根への分岐を通り越してしまった。
 登山道から別れて踏み跡に入る。路型はかなりしっかりしており、ルートはわかりやすいが、時々短い距離だが踏み跡が途切れる場所がある。天気がよくて見通しがよいので、今日は問題が少ないが、条件の悪い日は注意しないとあらぬ方向に踏み込んでしまいそうだ。小さなピークをひとつひとつ越えながら、特徴的な三角形の矢岳を目指して歩いていく。
 登山地図のポイントに着くと、そこには大概、誰かの手製の標識、あるいは、朽ちかけた木製指導標があった。なかにはメモ用紙然としたもの(さすがに材質は紙ではない)を画鋲で止めたものや、赤テープに現在地が油性ペンで書かれただけのものもある。
 やがて特に問題となるようなところもなく、矢岳の頂上についた。「ロープが必要」などと書かれた古いガイド本もあるが、今日のように条件がよければ、それなりに山慣れた人なら、問題は少ないと思われる。ただし、丹沢、奥多摩あたりの整備された登山道を歩いた事がある程度の経験では、総じて秩父の山々には歯が立たないことも多いので、安易な入山は禁物だ。
 矢岳からは、新緑の道を快適に歩いていく。透過光に映える若々しい木々の緑がこの上もなく美しい。尾根は適度な広さで、踏み跡も比較的はっきりしており、何の心配もなく稜線を辿っていける。
 やがて斜面一面が皆伐された篠戸山に着く。武甲山や大持山、小持山から南へと続く稜線が見渡せる。振り返れば矢岳が見えていた。だが、伐採された稜線は日当たりがよくて暑い。どっと疲れがでる。逃げるように日の当たる稜線に別れを告げて再び樹林帯に入る。やがて大きな送電線鉄塔に着くと、あとは大反山への最後の登りとなる。
 急登をひとしきり耐えると本日最後のピーク、大反山に着いた。軽く食事したりしてのんびりしていると、昨晩同宿だった男性が追いついてきた。避難小屋を我々より1時間ほど後に出発したそうだ。途中で膝を痛めたと言いながらも軽い足取りでやってきた。
 さぁここからは、一般のガイドブックにある登山道だと、油断したせいか、尾根を乗り換えそこね、若御子山への稜線に入りそうになった。少し戻り、怪しげな踏み跡を辿って、登山道に合流した。
 深くえぐれた道を下界へと向かって降りつづける。やがて沢に出会い、ここで顔を洗ったりしてさっぱりした後、人里へと下る。すれ違う地元の方々と親しげに挨拶を交わしながら、駅へと急ぐが、おいしい蕎麦屋があると聞きつけ、駅への道をやり過ごしてその店に向かう。まだ昼を少しまわった時刻だが、待ちきれない面々は、電車の待ち時間を口実に、ここで山行の無事完結を祝って、乾杯!
 そして秩父線電車に乗り、熊谷に戻るとまたいつもの名店(迷店!?)で、再び乾杯!!!!!何度も乾杯したくなる充実した山行だった。

(O記)

---- このページでは、小さな写真をクリックすると表題と同じ大きさの写真が見られます。写真をスクリーンショーにして見ることもできます。 ----