尾瀬北岐沢遡行

2012年9月8~9日(日)

源流帯のナメ 源流帯に近づくと緩やかな一枚岩の滑(ナメ)が続く

1日目
 熊谷駅をいつもの7時出発で、大清水へ向かう。高速道路はまあまあの混雑であったが、沼田インターを降りた国道はガラガラで、すんなり大清水に着いた。駐車場で、管理人から熊の目撃が多いので注意してとアドバイスを受けた。
 車の通らない奥鬼怒林道をひたすら歩く。いったい何のための自動車道路なのかと思わざるを得ない。2時間近く歩いて、ようやくお目当ての北岐沢に入る。さぁ楽しい沢遊びの始まりだ。
 遡行を開始すると、手頃な高さの滝が続く。中には大きな釜を持つものもあり、最近初孫誕生のY氏が水没した。シャンパンの代わりに、尾瀬の水でお祝いのシャワーを浴びたようなものだ。おめでとう!!
 やがて沢が狭くなると、この沢最大の15メートル滝に出会う。水量が少なければ左壁を登れそうだが、ここは左岸から大きく高巻いてクリアした。
 大滝を越えると、そろそろ今夜のテントサイトを探さねばならない。歩きながら、雨が降って沢が増水しても大丈夫そうな場所を何ヶ所か見つける。が、赤茶けた滝のすぐ脇に快適なサイトを見つけてここを今夜の宿に決めた。焚き火跡もあり、多くの遡行者が泊まっている様だ。さっそくビールやワインを沢水に浸し冷やす。それからテントの設営に入る。順序が逆という意見はごもっともだ。設営が終わると、いつも自身の山荘で囲炉裏に火をつけているO氏が、生乾きの薪に上手に点火する。さすが火付け名人。そして焚き火を囲んで、持ち寄ったつまみを食べながら、乾杯。とっぷりと日も暮れ暗闇に包まれるまで、とりとめのない話で盛り上がる。まるで30~40年タイムスリップして、青春時代に戻ったような素晴らしい時間を過ごした。
 就寝するとしばらく、空には稲光が走り、雷鳴も聞こえたが、雨は来なかった。

2日目
 周囲が明るくなるころ、起床して出発の準備をする。
 快適に過ごせたテントサイトを後に再び流水の中へ入っていく。昨日より全般に滝は小さく、ナメが多くなる。薄く流れる水の中で、フリクションを効かせながらヒタヒタと歩いていく。。
 奥の二俣に到着すると、素敵なテントサイトがある。きちんと流木が乾されている。早朝から遡行を開始すればここに泊まるのだろう。ここからはGPSと地図を頼りに、沢の分岐を確かめながら遡行していく。
 徐々に水量が減り、源流の趣き。小さな滝を乗り越えて行くと、前方に木のない空間が見えてきた。小松湿原だ。
 湿原はまるで泥沼で、草の生えているところを歩きたくなるが、そう言うわけにもいかず、足をどろどろにしながら湿原の縁を歩く。窪状のところを見つけて稜線の登山道へと登って行く。さしたるヤブ漕ぎもなく、ぽんと登山道に飛び出す。少し道を歩くと、水場があった。ここに小松湿原を示す表示板があった。理想的にはここに出てくるのだろうが、それにはもう少し、湿原を横切らないといけないような気もする。
 このまま登山道を鬼怒沼湿原経由で下山する方法が一般的と思われるが、今回はT嬢の提案で北岐沢の隣の猿沢を下降することにした。下降点を確認して登山道を外れる。ヤブ漕ぎというほどもなくやがて窪に入りしばらくで水が出てきた。
 水の出てきたところで小休止、再び沢じたくを確認する。O氏のわらじはもうボロボロだ。
 猿沢はとりたてて難しいところもなく順調に高度を下げていく。後ろ向きでクライムダウンするところも2ヶ所ほどで、確かに下降に適した沢の様だ。途中でI氏が、「あっ」と声を上げたかと思うと、水の中に手を突っ込み、何やらまさぐっている。少しして、水の中から何かを河原に放り投げた。 見れば30センチをゆうに越す、クリーム色の斑点が鮮やかで、まるまると太った大イワナ。だが、さすがは天然物。河原を走って流水に逃げようとする。再びつかもうとするが果たせず、イワナは水の中に消えた。写真を撮ることも忘れるような、大興奮の一時であった。
 やがて遠くに林道の白いガードレールが見えて、猿沢の下降も終わった。あとは昨日より長い林道歩きだ。充実感で一杯の一泊二日、沢登り山行が終了した。
 大清水からは途中、旧白沢村の温泉に立ち寄り、順調に熊谷へと戻った。
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