上越国境/丹後山から中ノ岳

2012年10月6~7日(日)

  色づき始めた兎岳(右)と彼方に中ノ岳(左)


係にとっては実に35年ぶりの丹後山、青春の思い出を呼び覚ます山行になりました。

1日目
 熊谷駅6時集合で、十字峡に向かう。しゃくなげ湖の右岸道路は相変わらず通行止め。その工事のためか、十字峡周辺の駐車場が規制され縮小されており、満車状態。やむを得ず、少し手前の道路脇に車を止めた。
 三国川沿いの林道入り口で、登山届けを提出した後、丹後山登山口へ向かって歩き出す。この林道も修復工事が進行中。
 さて、登山口からはいきなりの急登である。ステップや階段もない、急な斜面を滑らぬようにうまく足を置いて登っていく。昨年はここのオーバーペースがたたって、へとへとになってしまった。今回は意識的にペースを落として、じっくりと登っていく。それでも先の見えない急登は体力的にも精神的にもつらい。だがやがて傾斜も若干緩くなり、周囲の景色も見え始めると、少し余裕が出てくる。
 さらに登りつづけるとようやく、潅木帯を抜けだし、笹原の尾根道になる。右手には巻機山へと連なる国境稜線が、左前方にはこんもりとした丹後山、その左へは中ノ岳への稜線が連なっている。緩やかな稜線を登っていくと国境稜線に出た。係は昭和52年、つまり35年前の夏、谷川岳から巻機山を経由して、上越国境を辿りここへ来た。ヤブコギという程でもなく、踏み跡を拾って難なくやって来た覚えがある。見れば越後沢山へ向かう稜線には、わずかに一筋の笹原の乱れが続いている。あれが当時の踏み跡の名残りなのか。ここにある指導標にはいまだ「巻機山」方面を示す文字が残るが、その方向に道の入り口は見当たらない。もはやかつての踏み跡は廃道以下なのかもしれない。
 丹後山避難小屋は、2層の快適な小屋であった。1階はもうすでに満員状態だったので、我々は2階の一隅に陣取った。窓があり、平ヶ岳から巻機山方面が一望できる。荷物を広げて一休みしてから、丹後山に行った。何の変哲もない平らな頂上だ。三角点や標識がなければどこが頂上なのかわからないだろう。
 小屋に戻ると、さらに単独行者が2名、2階に上がってきた。今日の宿泊者は20名近い。のんびりと夕食にしていたら、1階の人たちは、18時には就寝状態。やむを得ず、我々も消灯にした。夜はほぼずっと雨がふり、時に強風で小屋の軋む音がした。

2日目
 周囲がわずかに明るくなるころ、起床して出発の準備をする。視界は30メートル程か。「朝霧深しは晴天の兆し」というがさて、どうだろうか。
 小屋を出発し、国境稜線を歩いていくと、霧は急速に晴れて、周囲の山々が見えてきた。丹後山を通過し、大水上山を目指す。山頂の手前に、利根川水源の碑がある。夏ならここのすぐ下に、逆三角形の雪田があり、それが水源と言われていたように記憶している。。
 やがてなんなく大水上山に着く。周囲は紅葉の始まった山々の饗宴である。係はかつて、ここから国境稜線を平ヶ岳に向った。さぁここから本当のヤブコギだぞ、と気を引き締めた覚えがある。今見れば、どこからヤブに突入しようか全く見当もつかない感じだ。途中一泊で平ヶ岳に抜けたのだが、今やそれも幻想のようだ。
 大水上山からは国境稜線を離れ、目の前の大きな兎岳への、今日初めての本格的な登りだ。山肌は紅葉に彩られ始めている。急な道だが、思いのほかあっけなく頂上に着く。そこには、前日荒沢岳から入山し、源蔵山のテントサイトで一泊したという中高年パーティが休んでいた。切り開きもしっかりしていて、いいコースだという。秋でも水場は確実らしい。ありがたい情報をいただいた。
 ここからは時に背丈を没する笹原の中を足元に気をつけながら、中ノ岳との最低鞍部目指して下っていく。今回のコースで最も歩きにくいところだった。だが、徐々に稜線が細くなると、笹薮からも開放されて、快適な縦走路になる。天気が良くて眺めが良かったら、素晴らしいところだろう。
 ちょっとした岩場を抜けると、遂に十字峡からの登山道に合流した。ここからは、中ノ岳頂上はもう目の前の筈なのだが、小さいピークがいくつか続き、幾度も騙される。そしてようやく、越後三山最高峰の中ノ岳に到着した。天候は残念だが、達成感は大きい。昨日から保冷し続けてきた氷水で、ささやかに乾杯した。

 名残惜しい頂上を辞して、長い下山路に入る。池ノ段で、縦走路に別れを告げ、紅葉の始まった稜線を下っていく。最初はかなり急な道だが、やがてなだらかな尾根歩きという風情になる。だが、道は滑りやすくて何度もしりもちをつく。今日は展望もあまりきかないので、単調な下りである。
 中間地点という日向山に近づくと、小さな池があったり、草紅葉の湿原が現れたりと変化に富んだ道になる。昨日の丹後山への道より、こちらの方が、標高差は大きいが登りみちとしては歩きやすいのかもしれない。そして、日向山を過ぎると岩がちの尾根に松の木が並ぶ千本松原になる。ここまではあまり下った気がしない。が、ここからは最後の急下降になる。あいにく、この頃より雨が降り出した。雨具を必要とするような降りだ。濡れた急坂を注意深く下山していく。十字峡発電所の建物がぐんぐんと近づいてくる。
 やがて、突然コンクリートの階段が現れ、左に回り込むと避難小屋が見えた。長い下山もやっと終わった。こうして充実感満点な、利根源流を訪ねる山旅は大団円となった。

(O記

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