816 秩父/雲取山から和名倉山

2012年5月25~27日(日)

雲取山からの富士山 2日目の朝、雲取山頂から望む富士山。今日はずっと富士山がお供。

秘峰「和名倉山」を埼玉県の山と再認識するために、埼玉県側からアプローチしかつ下山するコースを歩いた。

1日目
 三峰のビジターセンターでタクシーを降り、出発準備をしていると小雨が降り始めた。それぞれに雨対策をして出発する。展望もないので、黙々と歩く。今日のコースは、要所に小屋があるので、この程度の雨なら充分安全に歩けるだろう。霧藻ヶ峰の休憩所で昼食にして、白岩山の登りにかかる。当年85才というY氏もマイペースで登る。しかも休憩すると皆のためにと何かと食べ物を出してくれる。驚くべき体力、気力と気配りである。
 白岩山を登りきれば、今日の行程にも目処がつく。三峰からの雲取山登山は、実はそのほとんどが白岩山登山だ、という印象を強くする。イワウチワなど発見しながら、芋ノ木ドッケを巻いて最後のゆるやかな登りを頑張れば、今宵の宿雲取山荘に到着する。
 自炊小屋が乾燥室として提供され、皆濡れた雨具を吊るして干した。今夜の宿泊客は60人ほどで、ゆったりと居室におさまり、さっそく今日の健闘を讃え、かつ明日からの晴天を祈って乾杯となった。
2日目
 天気予報はまずまずだったが、朝のうちは雲が多く、ご来光は拝めなかった。快適に過ごせた雲取山荘を後に、雲取山を目指す。ひとしきりの登りで山頂に立つと、思いのほか大きな富士山が望めた。これから向かう飛竜山も堂々とした姿を見せている。その奥に、南アルプスの白銀の山々が連なっていた。ここからは、東京都の水源林をトラバースしていく道だ。
 だがトラバースとは言うものの、結構登り降りもあり、また左側が切り立っていたり、危ういところに桟道がかかっていたりで、あまり気を抜いては歩けない。途中、クモイコザクラの群落を見つけ、皆で感動する。飛竜山へは巻き道の途中から、頂上に直接上がる道を選び、やや心許ない踏み跡を辿って、頂上に登った。ここで、昼食にするが、展望もきかずちょっとがっかり。
 頂上からは、シャクナゲの林に続く道を、飛竜権現まで降りて、展望がいいという禿岩に向かう。なるほど素晴らしい展望で、明日歩く予定の和名倉山までの稜線がよく見える。ここからは、ひたすら巻き道を歩きつづけるが、時に爽やかな笹原に出会ったりして、気持ちの良い縦走路を辿っていく。やがて将監小屋の青い屋根が樹木の間に見えてきた。縦走路から小屋への近道に入り降っていくと、開けた草原の向こうに小屋があった。宿泊手続きをして、またもや昨日に続いて、明るいうちからご苦労さん会が始まった。小屋のビールを飲み尽くすかの勢いで、メンバーは盛り上がった。そのせいか、小屋の皆さんには大変親切にしていただき、翌日の朝食も少し早めに用意していただけることになった。素晴らしいもてなしの山小屋であった。
3日目
 さあ今日こそが今回のメインイベント。和名倉山を通って二瀬ダムに降りるルートだ。奥秩父主脈縦走路を一歩外れると、急に道は細くなり、両側から笹が覆い被さるようになる。だが思いのほか踏み跡は明瞭で、赤布も随所にあり、ルートはたどりやすい。東仙波の少し前あたりからは、展望も開け、背の低い笹原の中にトレールが伸びていく、実に快適な道になる。ただ、かつての森林経営の遺物が道端に残され、周囲の素晴らしい自然景観とは相容れない感じだ。メンバーの一人が、「廃墟を歩いているみたいだ」と漏らしたが、まさに正鵠を得ている。周囲の素晴らしい自然が、人の営みの虚しい痕跡を際立たせているようにも見える。
 川又分岐では、大きな太い倒木が、和名倉山方面への登山道を塞いでおり戸惑う。そして二瀬分岐で右折すると和名倉山への最後の登りになる。といっても山稜の腹を巻き登る感じで、程なく秘峰の頂に到着した。
 展望のない頂上だが、しばし感慨にふけり、帰路につく。二瀬分岐まで戻り、微妙な踏み跡を辿って二瀬尾根に入る。それでも予想以上に踏み跡ははっきりしており、奥秩父らしい苔むした原生林の中につづく道を辿っていく。迷いやすいという笹原も、見事に笹が枯れており路型が明らかである。やがて尾根を外れて、かつての伐採作業の事業所跡へ降りる急傾斜の斜面を降っていく。下りきると水場があり、その付近には大量の酒瓶や放置された線路やトロッコの残骸が散乱していた。
 ここからは森林軌道の跡である水平道を行く。だが道は荒れるがままで、所々に通行困難な場所がある。やがて水平道が尽きると、最後の急下降となる尾根道になる。多少のジグザグが切られてはいるが、疲れた足には厳しい急傾斜だ。それでもメンバーは鼻歌まじりで下りつづけ、1時間余りでついに下界への入り口、秩父湖にかかるつり橋へと降り立った。
 バス停へと急ぎ、予想された中で最も早い時刻に車上の人となった。そして熊谷に戻った我々は、やっぱりいつもの名店(迷店!?)で、盛大に乾杯!!したのであった。

(O記)

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