771 奥秩父/甲武信岳

11月19日~20日(日)

奥秩父主脈 甲武信岳から見た国師ヶ岳と金峰山


 週末の天気予報は「雨」。だが、日曜日の予想天気図を見る限り、すでに寒冷前線は東海上に抜けて、西高東低の冬型になる。ならば、多少風が強いのは仕方ないにしても、天気は回復するはずと読んで山行を行うことにした。
 当然土曜日は雨。佐久インターを降りて、以前より気になっていた、全国に2ヶ所しかないという、五角形の城跡「龍岡城跡」に立ち寄ってみた。もう一つの五稜郭は言わずと知れた函館五稜郭だ。
 雨のそぼ降る龍岡城跡は今は小学校になっており、校庭の一角に、当時の建物が保存されていた。文化財のある小学校とは素敵な話だ。堀も全部ではないが、当時のままに残されていて、しばし歴史探訪を楽しんだ。
 登山口の毛木場に車を止め、そばの四阿で、雨を避けながら昼食とした後、雨具を身につけ出発する。道は完全に整備され、この程度の雨降りなら何の問題もなく歩ける。2時間ほどで小屋に着き、燃え盛るストーブで、濡れたものを乾かし、明日に備える。
 夜は、解禁されたばかりのボジョレヌーボーを飲みながら同宿となった登山者たちと、一時の山談義。夜も更けてさぁそろそろ就寝という頃、空は満天の星空であった。
 夜明け前通り雨があったが、朝食の後出発しようとすると、上空は雲だが、山の麓の方は日が当たり、好天の予感。大山への緩やかな登り道を辿るが、あたりは薄暗く、奥秩父らしい雰囲気に満ちている。
 掴まる必要はない程度の鎖場を数ヶ所越えて、大山の頂上に着くと、動き始めた雲の下に、両神山や御座山が見えていた。標高の高い八ヶ岳は残念ながら雲の中だ。
 大山からは少し降りたあと、埼玉県最高峰の三宝山に向かって再び長い登りが始まる。ちょっとした露岩のピークがあると周囲を見渡し、空を見上げる。だいぶ青空が広がってきた。それとともに風も強くなってくる。
 やがて傾斜が緩むと、三宝山の頂上稜線にでる。広い頂上の真ん中に、一等三角点がある。まわりは樹林だが、すぐそばに大きな岩があり、その上に立つと多少なりとも遠望が効くが、見える範囲は少ない。
 三宝山からは再び少し下って、甲武信岳へと向かう。関東平野から見る甲武信岳は、単純に三峰、つまり木賊山、甲武信岳、三宝山と見えるが、三宝山からは2度ほど登り下りを繰り返し、ようやく本当に最後の登りとなる。急な登りをひとしきり耐えると、強風の吹き抜ける甲武信岳についた。
 頭上は素晴らしい青空だ。やはり八ヶ岳は見えないが、奥秩父の主脈、国師ヶ岳から金峰山へと続く稜線が素晴らしい。いつか歩きたいと思わせる重厚な縦走路だ。
 頂上からは青空のもと両神山から西上州の山々、奇怪な形の五郎山、男山や天狗山、そして御座山がよく見えた。
 頂上で展望をおかずに昼食にするつもりだったが、風が強くて寒いので、写真を撮って小休止した後、千曲川水源へと向かう。縦走路をわずかで、水源への分岐に着き、展望ともお別れである。
 千曲川水源で昼食にする。
 そして山行のフィナーレは、緩やかな沢沿いの道を毛木場へと歩いていく。最初はカップでやっと掬える水量だった千曲川が、歩くにつれてどんどんと水量を増し、奔流となる。葉の落ちつくした木々の間から、透明度の高い青空がのぞく。晩秋の奥秩父は、私たちの心を充実感でいっぱいに満たしてくれた。(O記)