旧三国峠に立つと、哀愁感が漂うのは、この峠が江戸と越後を結ぶ、重要な街道
だったからであろう。今は登山者以外に、歩く者はいないが、栄枯盛衰は世の常、初秋の山に木枯らしが舞う。抜けるような青空の中、三国山に登る。誰もいな
い頂上で、ささやかな昼食を摂る。下山は再び峠に戻り旧三国街道に迂回して往時を偲ぶ。雪崩による、越後藩士の遭難の碑は、囚人護送中の殉職であった。今
は何事も無かったように、薄の穂が秋風に揺れていた。再び車中の人となり、秋山郷へ。小さな宿は、人情味に溢れ、旅心を和ませてくれる。赤茶色の温泉は、
あたかも、効能がありそうで、つい長湯になってしまう。山に登って、これだけ寛げれば、明日の山も楽しいだろう。
2日目
宿の主人に車で送ってもらい登山口へ。歩き出すと急登の連続。樹相と傾斜は、私が落伍した丹後山に酷似しており、一瞬嫌な思いが過ぎったが、仮にここで
背走すれば私の登山生命は終わると思い決意新たに前進した。尾根にでると傾斜は緩くなるが、剃刀のような狭い岩稜の連続になる。緊張の中、体力勝負の登り
4時間半で頂上へ。誰もいない山頂の貸切で贅沢な昼飯はどの様なフルコースよりも美味い。晴れていた空も少々怪しくなって来たので下山開始。暫くは、進行
方向の右手側が絶壁で足が震える。尾根が終わると、長い下りの連続で、駐車場までの所要時間は4時間。鳥甲山は、登山口から山頂までの標高差は1000㍍
位であるが道はジグザグでは無く直登であり尾根部分は、両サイドに切れ落ちており、しかも山容は怪鳥が大きく翼を広げたような左右対象の形状なので、二つ
あるどちらの登山口からのぼっても、時間的には大差はない。また途中にエスケープルートは無いので、引き返すにしても、かなり早い段階でないと、前進も後
退も同じである。良きリーダー、良き仲間に恵まれての楽しい登山であった。その体力にも敬意を表したいと思います。 ( O記